4月 2016

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新聞紙面の中で、挿絵の在り方とは一体何だろう?
絵は、どのような役割を持つだろう?
私の作品にはどんな作用があるだろう?

そんなことを考えつつ、いや、ある時は全くそんなことを無視しながら、 原稿を落とさないよう、3年間、西日本新聞『読者文芸コーナー』の挿絵を 担当させて頂きました。

見る人の存在や、絵を見た人がどう感じるだろうか?という事を、 描く前からこんなにも意識して制作したことは今までなかったので、 題材を選ぶのに戸惑うことも多くありました。 その中で、出来るだけ私の大事にしているものを発信していこうと努めました。

前半の水彩画は、彩色がありながらも紙面はモノクロ掲載である為、 濃淡を意識して、どのような表情がでるのか毎回掲載が楽しみでしたし、 後半のモノクロの作品では、元々好きだった画面の構成に、 様々な視点から挑戦できたように感じます。

75枚、どの作品も、作業中の想いや、筆の感触、悩みや達成感、 色んな思い出が湧き上がってくる愛すべき作品達です。 新聞紙面からでは見えなかったものを、原画から感じて頂けましたら幸いです。

3年間、多くの経験ができ、また、これからの制作に繋がるヒントや、 新しい発見することが出来ました。 いつも応援して下さった方々、関わって下さった全ての皆様に感謝申し上げます。

2016年4月 金子 恵

2016年3月21日(月)掲載 『未来の構図を描いて』

2016年3月21日(月)掲載
『未来の構図を描いて』

3年間担当させて頂いた最後の挿絵となりましたが、
今回も何を描くか中々決まらずに、春日公園を歩いていました。

この3年、春日公園には色々と助けられました。
景色だけでなく、どんぐりや落ち葉、セミの脱け殻を拾ったり、
具体的なヒントではなくても、春日公園を歩いて綺麗な風に当たるだけで、
身体の中に新鮮な血がめぐって、
また頑張ろうという気持ちをもらえました、ありがとう春日公園!大好きです!

思えば3年前、1番初めの挿絵も、何を描こうか考えている時に
野鳥の会の皆さんが春日公園にいらして、
熱心にカメラを構えている後ろ姿を描かせてもらったのでした。

最後の一枚も春日公園を歩いている最中に、
自分の影が映っている地面を見た時にアイデアを思いつきました。

これからの自分をどう展開していくかをイメージして描いてみました。
きのこ頭の髪が自分らしく描けました。

2016年3月7日(月)掲載 『素敵な時間』

2016年3月7日(月)掲載
『素敵な時間』

春日市民図書館の児童コーナーでの一コマです。
可愛らしく並んで本を読んでいる子ども達がいたので、早速描きました。

この子たちは本当に可愛かった!
思い出すだけでジーンとします。

熱心に本に見入っていて、その冒険中のわくわくが、
背中から眩しいくらいに発光されていました。
お友達同士、共通の時間を持ちながら、
それぞれの世界に夢中になっているんだろうな。

こんな時間の使い方をしている子ども達の未来、
どうか楽しく、平和で健やかでありますように!

挿絵の中で、子どもの後ろ姿を何度か描いてきましたが、
何か夢中になっている人の後ろ姿が大好きです。
軽トラの後ろ姿にも同じようなひたむきな何かを感じます。

春日市民図書館にも、ほんわかする光景をいくつも頂いて、
この3年間大変お世話になりました。
私が出来る恩返しはその光景を描くこと、残すことだと思うので
いくつか図書館の絵を出すことが出来てよかったです。
春日市民図書館ありがとう!
そしてこれからもよろしく!

2016年2月16日(火)掲載 『春になったら』

2016年2月16日(火)掲載
『春になったら』

今年度もそろそろ終わりが近づいて、
挿絵の仕事も残すところ何枚かになりました。

色々と描いてみたいことや、挑戦したいことはやれてきましたが、
描きたいモチーフとして前からあった「スワンボート」を出せていなかったので
カプーアに引き続きの大濠公園です。

ボートは、春になってからしか営業しないのですが、
もしかして池の奥あたりに、スワン群団がひっそりといないものかと思って探しますが
どこにもいませんでした。
写真や資料を頼りに描きましたが、スワンの顔が難しかったです。
春になったら乗りに行きます。

2016年2月1日(月)掲載 『銀世界の轍』

2016年2月1日(月)掲載
『銀世界の轍』

あと何枚かで今年度も終わりということも関係したのか、
何を描くかいつまでも全く決まらずに、締切のギリギリまで悩んでいました。

そんな時にちょうど福岡で、
水道も止まって、バスも動かず、家の前もすごい雪で外にでれないくらいの
大雪が降りました。

少し雪が止んだ頃、
長靴をはいてザクザクと雪を踏みしめながら通りまで出てみると、
路面は真っ白で、しーんと静まり返っていました。

視界のほとんどが「白」である光景は圧倒的で、
その中の足跡やタイヤの跡が面白かったです。

最近はモノクロの作品を描いていますが、
白を「雪」と見立てて描くことが初めてだったので、
貴重な経験になりました。
表現とは面白いものです。
そういえば、雪を描いたのは初めてかもしれない。
締切前に楽しいギフトをもらいました。

2016年1月18日(月)掲載 『景色が見せる思い出』

2016年1月18日(月)掲載
『景色が見せる思い出』


福岡市美術館が2016年の秋からリニューアル工事に入るとの事で、
色んな思い出のある美術館を、
アニッシュカプーアの作品とともに描いてみました。

しっとりとした空間の、この光景はもうみ見られないかもしれないけど、
2年半後、リニューアルオープンを楽しみに待っています。
ありがとう市美。

カプーアの作品を、どのくらいの大きさで画面に入れるかどうか
構図を色々調整しました。

思い出が完成を引きとめたのかな?
いつもすぐ決まるタイトルが、なぜか中々決まらず、
最後までピッタリくるタイトルが出ませんでした。

2016年1月3日(日)掲載 『師、時々味方』

2016年1月3日(日)掲載
『師、時々味方』

いつも使ってるお馴染の道具たちを描きました。
1月の1日と3日のカットは普段よりも小さめカットです。

お正月ということで、にぎやかな空気となっている時期ですが、
そんな時こそ、普段身近にひっそりとあるものに目を向けてみようということでモチーフを選んでみました。

すごく大事な舞台で、綺麗な着物をきて、というような華やかな場面にいる時でも、
その時に手にしていたカバンの縫い目の部分の感触が印象に残って、
その場面を思い出すと、その縫い目の感触が先に思いだされる、というような事が
今までの私の人生において多く残ってきました。

そして、そういったもの達で自分は構成されていて、
そこから感じて動くこと、学ぶことも多く、
作品作りにおいても、印象に残る感覚的なモノの捉え方を
大事にしています。
また、誰かの作品を見る時も、そのようなものを感じる作品が好きです。

道具から教わることは多いです。
失敗したことを道具のせいにすることもあってごめんなさいですが、
いつもそばにあって、表現の幅は彼らにゆだねられています。
手が痛くならないように配慮されたものや便利なものも多く、
その存在に感謝しています。

2016年1月1日(金)掲載 『何を願いますか?』

2016年1月1日(金)掲載
『何を願いますか?』

振れば何でも思い通りのものがあらわれ、
一寸法師を大きくしたり、様々な願いを叶えてくれる、
打ち出の小槌を描きました。

現役で頑張り続けるクルム伊達公子さんが、
インタビューで、「何が欲しいですか?」と聞かれていました。
私は「勝利」と言うのではないかと答えを待っていたら、
ハッとする答えが返ってきました。
「私が一番欲しいものは、回復力。」

勝利やランキングや技術は、自分で努力して得るものであって、
そんなものを打ち出の小槌などに願おうなどと思っているようでは
いけないんだ。

体力が回復さえすればまた練習が出来る、試合が出来る。
炎天下のコートで、汗だくになりながら笑顔で答えていた伊達さんの姿にとても感動しました。